再会日程調整のファクターは。

曽我さんの家族との面会が9日に決定。「一日でも早いにこしたことはない」という政府のロジックは実に明快だが、参院選前ということを考慮に入れないわけがない。この間の訪朝で期待値を上げすぎたという失敗は二度としないという学習効果があったのか、今回の事前の報道を見る限りでは「期待を抱かせつつも期待させすぎない」というなかなか見事な調整ぶりだったと思う。政府の犬である記者クラブによる統制がきちんと取れていたと言えるかもしれない。
従って、仮に再会が参院選後であろうと、世論の評価はそれほど変わらなかったはずで、今のような積極的評価が多く見られたはず。にもかかわらず9日に決定したということの意味は。参院選の前にするか後にするかという議論が政府内であったのは言うまでもないことで、別に非難されることもないごく自然な流れだが、問題なのは今回このようにそこで前を選択した理由。政府が参院選前を選択したのが果たして正しかったのかという点。
前か後かを考える時、簡単に言えばどちらが国民的支持を得やすいかが問題になる。その点を踏まえて政府は前を選択した。つまり、参院選前の再会が、参院選およびその後において自民党に利する効果を与えると判断した。当然、そういう意図を国民に見抜かれるリスクも考慮しただろう。したがって過剰に粗野なパフォーマンスを遂行することで、これがパフォーマンスではないという、推理小説でよく後に覆ることになる状況証拠的な確信を調達する目的があった可能性もある。
いつも通りのパフォーマンスだとすれば、残念ながら政府は民度を少し低く見積もりすぎだと言わざるを得ない。いくらワイドショー的政治を好む国民とてこう何度も見え透いたパフォーマンスを繰り返せばさすがに気付く。そして尚且つ、パフォーマンスが粗野すぎるがためにその裏を読もうとするような国民はいなかった(これには別の理由があるが)。
結局、政府は世論の行方を完全に見誤ったと思う。今回は参院選後にしたほうが純粋な支持が得られたはず。今形成されている世論は「再会は本当に良かった、でも政府の思い通り支持はしない」という考えである。つまり、ほとんどプラスにもマイナスにもなっていない。プラスにもマイナスにも作用しなかったことは、後々「だからあれは善意だったんだって」と言い張る理由にはなり得るが、少なくともこの件では参院選後にした方がもっと素直な支持を得られたのではないか。
そこまで考えた上でも、参院選自民党が急激に議席を減らすことへの恐怖感が勝ったのかもしれない。いずれにせよ参院選で一つの答えが出る。