これはしんどい。

先輩との約束どおり朝九時に研究室に到着。死ぬほど眠い。実験室に行き、装置のスイッチの入れ方を教えてもらう。装置が温まるのに2時間ほどかかるので早く入れとかないとダメなんだそうだ。
操作自体はすぐに終わり、控え室に戻ってゆっくり休憩しようかなと思っていたら、助手のM先生が登場。装置が使えるようになるまでの2時間、微生物について熱く語り合った。
地球上に存在する微生物のうち、人間がその生態を特定できているのは推定で僅か2%に過ぎないらしい。特に最近熱いのは、超高圧や超高温や超低圧や超低温などといった極限環境に生息する微生物の研究だ。彼らのどんな体の構造によってそこで生息することが可能になっているのか、あるいは何をどのように代謝してエネルギーを獲得しているのか、興味は尽きない。特に不思議なのが、深海底の熱水噴出孔付近での超臨界状態の環境にすら、様々な生物が生息しているという事実。一体どんな体の構造をしてるんだろう。どうも細胞壁にはやはりセルロースが含まれているらしいんだけど、なんで超臨界状態で分解されないの?僕の持つ常識が全く通用しない世界なんだろうか。人類はまだ宇宙に出るには早いよ。地球にはまだ全然分かっていなくてしかも明らかに有用そうな研究対象が腐るほどある。
とかいうことを話してたら、時間になったので実験室に行き、いざ実験開始。僕を主に指導してくれるのは博士研究員のM先輩と博士一回のI先輩なんだけど、M先輩は常日頃から大忙しだし、I先輩は今は本を書くのにかなり忙しいようだ。だから最初にほんとの大まかな流れだけI先輩から説明されて、後はほぼ完全に放置だったので、かなり四苦八苦。分からなくなると控え室にいる先輩に聞きに行かなければいけないんだけど、実験室が3階、控え室が地下1階にあるもんだから、何回も往復しているうちに足が棒のようになった。実験よりもこっちのほうが疲れた。