そんなこと言われてもなあ。

控え室に到着したと同時に教授に呼び出される。前に教授におねだりして買ってもらった本が届いたようだ。値段が高いだけあってすごい情報量だ。でも全部英語だし読むのに時間がかかりそうだなあ。
一旦控え室に戻った後、報告書の件で再び教授と話し合う。教授が新たに目を付けている大きな研究テーマの初っ端を僕が担当することになったのは前にも言ったとおりだけど、今日もそのテーマについて色々と話し合った。報告書を書くために資料を集めまくったり勉強したりしているうちに僕もそのテーマに対してかなり興味が湧いてきていたのだ。テーマは壮大だがうまくいけばこれはとても有用で環境問題改善にも寄与できる。
そんなことを話していたら教授がそれとなく「博士過程まで残る気はないか」みたいな話を振ってきた。
この研究室に配属されてすぐぐらいのときに、「君のテーマを考える上で参考にするから」ということで、僕が修士で就職するのか或いは博士課程まで進むのかを聞かれたことはあった。そのときは正直に「まだ分からないです」と答えておいたんだけど、今回のは明らかに「質問」ではなく「勧誘」だ。経済的な負担を軽減するシステムの話や、論文の数さえ十分なら2年で博士課程を終えることが出来るとかいう話もしてくれた。
僕のことを買ってくれるのは嬉しいんだけど、たぶん教授が評価してくれているのは僕の研究に対する態度と文章力なんだろう。僕としてはもっと他に見てほしいところがあるし、今からそれを見せていきたいと思っている。だからちょっと複雑な心境だった。しかも迷っているのはそういうことについてじゃなくて、単純に自分が研究に或いはこの研究室に合っているかどうかを見極めてから結論を出したいっていうことなのに。まあ適当にはぐらかして答えておいたからいいけど。
ということで今日は報告書作成の続きを延々とやっていた。3時ごろになってI先輩が僕のいる控え室までわざわざ来てくれて、次の実験の指示を出してくれた。よし、早速明日とりかかろう。
帰宅後、バイトに行く。教え子のM君のクラスではやたらとギターが流行っているらしく、M君もそれに流されてギターを弾いてみようと思っているらしい。それで友達から古いアコギを貰ったはいいが弦が切れてて張り替えないといけない。でも張り替え方が分からない。ということで今日僕と一緒に張り替えようと約束していたのだ。途中の休憩時間と授業後に一緒に張り替えて、完成だ。ていうかこの子は日曜はラグビーのクラブに参加し、学校の部活ではバスケをやっているんだけど、まだ趣味を増やす気か。上手くなったら競演したいもんだ。