液体バイオマス燃料。

この間のエントリ[http://d.hatena.ne.jp/yeyehill/20050720#p1]で「2008年からETBEを7%混入したガソリンを販売することになった」ということを書いたけど、今日はその関連で、液体バイオマス燃料についてまとめておきたいと思う。「環境関連の知識の一つとして」というくらいの漠然とした態度でも役に立つような大まかなことしか書かないつもりなので、環境に興味のある方はご一読を。




バイオエタノール
バイオエタノールは、主にブラジルやアメリカで、ガソリン代替燃料としての地位を築きつつある。現在のところ原料としてはとうもろこしやさとうきびなどが主に用いられているが、これらは本来は食糧である為に、将来の食糧危機を考えるとあまり大量に供給されることは考えづらい。故に将来的には、世界的に大量に存在する樹木などからもバイオエタノールを生産する技術の開発が望まれる。もちろん、その利用に際しては計画的な植林と伐採が必要不可欠である。
現在はガソリンにエタノールを混合して自動車燃料とする方法がよく用いられる。比較的少量(およそ20%くらい)までの混合であれば、ガソリンとほぼ同等な発熱量が維持できる。自動車燃料としての性質や排気ガスの面では、ガソリンよりも良くなる点、悪くなる点がともにある。地球温暖化緩和を目指すならばエタノールの混合量の多い方がそれに貢献できるが、発熱量の低下や金属部位の腐食が問題となる。また、軽油への混合も始まりつつある。


バイオメタノール
現在、バイオマスからの工業的なメタノール生産はほとんど無いに等しい。しかしながら、最近研究の進んでいるガス化という手法によって、木材などのバイオマスからかなり高効率でメタノールを生産する道が拓けつつある。メタノールは様々な燃料(例えば燃料電池)の原料としても幅広く用いられている為、その研究・開発は極めて有意義なものであると言える。
ガソリンの代替として考えた場合、燃料としての性質は良好で、有害物質の排出もかなり少ないが、ホルムアルデヒド等の排出があり、また発熱量はエタノールよりも更に悪い。着火性が悪い為、軽油の代替とするためには多少の技術が必要である。


ジメチルエーテル
バイオマスからジメチルエーテルを製造する場合、メタノールと同じくガス化の工程を経る。メタノールと同様に様々な用途があり、生産増大が望まれる。
発熱量はエタノールメタノールの中間くらいで、公害性はかなり低い。また、金属も腐食しない。着火性が良好で、軽油の代替燃料として優れた性質を持っている。


MTBE及びETBE
ガソリンエンジンの燃料として重要な性質の一つにオクタン価というものがある。オクタン価が高いほど熱効率が高く、同じ化石資源由来燃料を用いるにしても、オクタン価が高い方が省エネにつながり地球温暖化緩和に寄与できると言える。MTBE(メチルターシャリーブチルエーテル)やETBE(エチルターシャリーブチルエーテル)はガソリンに混合することでそのオクタン価を向上させることが出来る。エタノールメタノールもオクタン価を向上させることが出来るが、燃料としての他の性質を悪化させてしまう。他方、MTBEやETBEはそのような欠点は示さない。故にMTBEはオクタン価向上剤として広く利用されている。ETBEは若干値段が高い為、それほど普及していない。
しかし、アメリカでガソリンスタンドの地下タンクからMTBEが漏洩し、地下水の汚染が問題となった。また、発がん性も疑われ、アメリカでは使用が縮小される傾向にある。


脂肪酸メチルエステル。
植物油やその廃油などから作られる脂肪酸メチルエステルは、軽油の代替として極めて有望な燃料であるためバイオディーゼル燃料と呼ばれる。既に欧米などで実用化が本格的に進んでおり、日本でも京都市でゴミ収集車燃料として100%のバイオディーゼルが使用されるなどされている。従来の軽油と比べて発熱量の低下はあるものの、燃料としての性質はほぼ軽油と遜色ないものが生産されている。


まとめ。
まとめると、ガソリン車のバイオ燃料としてエタノールメタノール・MTBE・ETBEが、ディーゼル車のバイオ燃料としてジメチルエーテル脂肪酸メチルエステルが期待されている。
利用拡大に際しては地球温暖化だけでなく他のリスクも考えなければいけないので、いろんな面でまだまだ研究が必要。