何なのだ。

起きてすぐにランの調子を見に行く。かなり弱ってはいるが、特におかしな様子ではない。痴呆は昼夜逆転することが多いらしいので、そのせいかもしれない。とりあえず今日は様子を見守ろう。
かかりつけの獣医さんに事の次第を連絡するため電話。こちらでも痴呆かもしれないとのこと。確かに今日も、おとなしいのはおとなしいが何となく僕らのことが分かっているような分かっていないような雰囲気だが。とりあえず昨日の診断書とか僕らの説明とかの情報が欲しいし精神安定剤を渡したりしたいので、一度病院に来てほしいとのこと。
昼過ぎまでランはずっと同じような状態だ。ただ気になるのはご飯を昨日の朝から全く食べていないこと。多分昨日の注射にはそれなりに栄養が含まれているだろうけど、さすがに少ないだろう。というわけで、少し食べさせてみようと寝ているランにご飯を近づけると、食欲を思い出したのか、すこしずつだが食べる。あとで少し吐いたが、とりあえず食欲はあるようでよかった。少し光が見えた。
ひとまず容態が安定している様子だったので、気分転換も兼ねて元教え子のY君を誘ってスタジオへ個人練習。ドラムを叩いている時は全ての不安がかき消される。二時間Y君とずっとアドリブで演奏しまくってかなり楽しかった。軽い気持ちではじめたドラムが、いつの間にか自分の中でこんなに大きな存在になっていたのか。
帰りに獣医に寄って、現状を報告する。ランの状態を説明すると、先生もよく分からない様子で、本当に痴呆かどうかはまだわからないとのこと。一般的に痴呆の犬はめちゃくちゃ食欲があるらしいし、今は薬も切れているはずなのにおとなしい、というのがどうもよくわからないようだ。今日は様子を見て、また昨日と同じような状態になったら薬を飲ませてみようということになった。今夜のランはどうなんだろう。少し夜が来るのが怖い。
家に帰ると、相変わらずランはおとなしい様子だ。僕のこともきちんと認識する。ただかなり衰弱している。親によると、また少しご飯を食べたようだ。よしよし少しずつ復活する傾向だ。あとは今夜の様子だけか。
こんな状況でもドラムレッスンには行かないわけにはいかない。特に今日は、EW&FのSeptemberを演奏する日。一番最後のキメだけは考えていたが他は完全にアドリブ。16分のハイハットアクセントを入れたパターンで撃沈したほかはそれなりにこなせた感じ。師匠も「色々試してたねえ」と仰った。まぁ、それにテクニックがまだ伴ってないんですが。
家に帰ったのは午後8時半。昨日のこの時間にはランはもうおかしくなっていたので、おそるおそる家に入ってみると、まったくうめき声は聞こえない。どうやらずっと同じような状態のようだ。これなら薬を飲ませなくて済む。いや本当によかった。あとは徐々に体力を回復させるだけだ。