環境問題とは何か (PHP新書)作者: 富山和子出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2001/10メディア: 新書購入: 4人 クリック: 44回この商品を含むブログ (7件) を見る

「環境問題」の根本にあるもの、つまり一体何故今こうなってしまっているのか、という点についてほぼ完全に核心を突いた本であると思う。それは、日本で言うならば、よく言われる「都市開発」なのではなく、これにより引き起こされる農村部での農林水産業の衰退であると言える。
マスコミで環境問題に関する意識が煽られると、人はすぐに「木は切ってはいけない」「森には人の手が入らないほうがいい」などと言いたがる。人類が始まって以来、我々の祖先は自然を利用し自然を保護して生活をしてきたという事実も忘れて、である。
本書では、そのような昔の人たちの、血のにじむような努力を敬意を持って振り返りつつ、今後の我々の指針となすべき態度を取り入れることを訴えかける。未だに「割り箸悪玉説」や「林業バッシング」の側にいる人間達に怒りめいたものも込められている様は、著者がこれまでの活動の中で相当腸が煮えくり返るような思いをしてきたのであろう。
全ての話は、究極的に言ってしまえば「都市の人間達の、自然と人間との関係に対する無知と無関心」ということに尽きる。
環境改善の為には農林水産業を活発にさせることが不可欠である。にも拘らず、農林水産業を通して自然を守り我々の生活を守ってくれている地方を切り捨てる道をひた走る今の日本にかなり強いメッセージを与えてくれる。
最後に、僕が思わず心を揺さぶられそうになるくらい同意した一文を紹介。

この一事に私は現代社会の、農林魚業といえば軽視され、環境といえばはじめて大事にされる、土台を忘れた浅薄な風潮を見る。