読書
なんだろう。この本を読み終えた時、いわゆる論説を読んだ時とは全く違う感覚を覚えた。興醒めなスタジオトークが全く入らないという意味で純粋な、問題を忠実・鮮明な形で炙り出しているという意味で良質な、そんなドキュメンタリーを見た直後のような気持…
情報の受け手としての市民達の間には大きな断絶が出来つつあるが、少なくとも「この本を読む側」にいる人は近未来のネット社会に希望ばっかり抱かずに、考えられ得る(特に負の面の)副次的効果を知りきちんと状況を認識し行方を注視しつつしっかりと生きて…
ドゥルーズによれば、世界は一種の未分化な卵であり、潜在的な多様性を持つものである。そこに溢れる未分化な力の働きに対し、それぞれが問題を設定することで、固有性を持つ個体が生成される。この生成は常に暫定的な解を出し続ける分割不可能な流れである…
本書は、社会学者である著者の数回の講演をもとに加筆修正されたものである。憲法(およびそれを支えるべき憲法意思)の第一章、サブカルからの時代分析の第二章、オウム信者への提言の第三章という構成だ。 第一章では、9.11を契機とした対テロ戦争=「終わ…
タイトルが悪すぎる。とても環境論一般として充分に語られた本とは言えないし、全然「これから」じゃない。「これまでの環境問題の常識を疑う」みたいなタイトルにすべき。 地球温暖化や環境ホルモン、ダイオキシンなどについてきちんと科学的なデータに基づ…
出来事がコンパクトにまとまっている。あまり分析とかはない。
自然科学・政治・社会・思想・経済など、環境を様々なアプローチで取り扱う。環境を考えるには、個々の分野における研究を深化させつつも、常にその最新の成果を総合的に結びつける営みが必要となる。それが故に環境学は雑学になり易い。本シリーズは、おぼ…
京都大学大学院エネルギー科学研究科エネルギー社会・環境科学専攻の教授たちが担当する一般教養の講義を本にしたもの。内容的には下の本と同じようなものだが、講義ということで比較的焦点が絞られている感アリ。
ウチの教授が編著を務めた、バイオマス及びバイオマスエネルギーについての本。値段とページ数からしてボリューム感が漂うが、その内容・質は、この分野における最も網羅的かつ最先端なものであると言えると思う。そして凄いのは、にもかかわらずこの本を読…
最高に面白い。本書には歴史の記述の面では少々偏りがあるらしいが、主題は絶対に読んで損無し。今の改憲・護憲論争がどんなレベルのものなのかがよく分かる。 著者は本の中で「偉大な政治家は総じて演説が上手かった」と言う。本来難解であるはずの事柄を、…
ある損保会社が内部告発を受け、主人公がその告発者だという疑いをかけられて苦悩する物語。期待して読み始めたのだが、残念な内容だった。 損保業界の話やバブル期以降の日本経済の流れなどに関しては「よく調べてあるな」という印象だが、この本の評価はそ…
9.11テロからアフガン空爆に至るまでの経緯について、様々な論者たちの視点をまとめた本。対テロ戦争という題目の下で急速にアメリカの、そして世界の空気が変わっていく様に対して、「本当にこれでいいのか」という点ではどの論者も一貫している。ただ読み…
市場主義の終焉―日本経済をどうするのか (岩波新書)作者: 佐和隆光出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2000/10/20メディア: 新書 クリック: 7回この商品を含むブログ (12件) を見る
20世紀の日本の動きをまとめる上でわかり易い本。日本版「第三の道」を模索する為に、基本的な流れをおさらいできる。ここにおける解説は極めて妥当なもので、理解しやすい。 著者は、日本のシステムは工業化社会においては見事に適合したために大きな経済成…
エコ・エコノミーとは、一言で言えば生態学的視点を最大限考慮に入れた経済秩序である。とかく対立しがちだった生態学と経済学とが、地球生態系の従属物としての市場という観点の下で互いの思考を統合すべきだと著者は主張する。具体的にはそれは、資源の維…
「世間」とは何か (講談社現代新書)作者: 阿部謹也出版社/メーカー: 講談社発売日: 1995/07/20メディア: 新書購入: 35人 クリック: 239回この商品を含むブログ (95件) を見る
日本独自の概念として古来から人々の会話にしばしば登場する「世間」という言葉がどのような背景と意味を持って今日まで保存されてきたのかについて、数種の有名な文学作品などを取り上げながら説明している。万葉集に始まり、吉田兼好、親鸞、井原西鶴、夏…
1994〜2004年までの間に宮台真司が受けたインタビュー等の記事を集めたもの。インタビュー記事がメインなので内容は割りと平易だが、40万字という量の為読み終わるのにはやや時間がかかる。 宮台真司のこの10年間における戦略の推移を整理するには格好の一冊…
日本の新世代型の循環型社会への道として、3R(Reduce、Reuse、Recycle)の推進が叫ばれる中、リサイクルというものを基礎からきちんと見つめなおす時に忘れることの出来ない視点を幾つか提供してくれる。 リサイクルの価値も、何をリサイクルするかによっ…
「環境問題」の根本にあるもの、つまり一体何故今こうなってしまっているのか、という点についてほぼ完全に核心を突いた本であると思う。それは、日本で言うならば、よく言われる「都市開発」なのではなく、これにより引き起こされる農村部での農林水産業の…
田中宇氏は、ウェブ上を駆けずり回って集めた情報を基にした国際情報の分析を自身のウェブサイト(http://tanakanews.com/)にて行っているほか、国際情勢に関する独自の解説メールニュースを配信していることで有名な人物である。 本著でも同様に、ウェブ上…
2002年に閣議決定されたバイオマスニッポン総合戦略について、広範に亘る事項を網羅した本。バイオマス導入、現状、新技術紹介、そしてこれからの課題について実にわかりやすくまとめられている。 環境問題に関しては、より多くの人に向けて理解を求めること…
第三の道とは、イギリスのブレア政権が掲げる中道左派政治理念であり、本著はブレアに多大な影響を与えたといわれる社会学者アンソニー・ギデンズによる第三の道解説書である。第三の道に関する記述もさることながら、そこに至る歴史的背景や現状についての…
リチャード・ドーキンスは、言わずと知れた著書『利己的な遺伝子』などが世界的ベストセラーとなった、世界で最も有名な生物学者の一人である。本著では、遺伝が4つの塩基の配列を基にした極めてデジタルな機構であるという生物学的事実、ダーウィンの唱え…
本書は、怒れるジャーナリストと言われる斉藤貴男氏が、今の日本がいかにおかしな方向に向かっているかという点について国民に知らしめ、皆で異論を唱えようという本である。お上の決めたことにおとなしく従う或いは何も反対しないという、統治権力にとって…
勉強する傍ら色々な本に手を出し始めた予備校時代、予備校の先生に紹介してもらった本。奇しくも著者はその時の僕の志望校である京都大学の教授。無事入学できたら絶対にこの教授の講義を取ろうと心に決めたものだった。 本書は、科学哲学の入門的な内容の理…
何気なく買った本が意外と面白かったというのはよくある話。この本もその一つ。 あとがきによると、この本は明治大学法学部での講義をベースとして書き起こしたもので、社会の中での情報を様々な角度からとらえ情報の分析を通して自分自身の問題意識を高めて…
さてこの前楽器屋で色んな本を立ち読みしてたが、理論書で間違いなくこれが一番いいだろうという本を見つけた。リットーミュージックの「新・実践コードワーク」シリーズ。 様々な天才達の経験則を理論的に解析して一般化するという手法は現代音楽理論の根幹…
朝生テレビでもお馴染みのこの二人により、暴力・右左翼・国家といった政治の基礎部分に始まりメディアや近代社会に至るまで様々な、そしてここでしか見れないような深くユニークな議論がなされている。特に知識人という人種について論じられているところは…