これからの環境論―つくられた危機を超えて (シリーズ地球と人間の環境を考える (12))作者: 渡辺正出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 2005/01/01メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (5件) を見る

タイトルが悪すぎる。とても環境論一般として充分に語られた本とは言えないし、全然「これから」じゃない。「これまでの環境問題の常識を疑う」みたいなタイトルにすべき。
地球温暖化環境ホルモンダイオキシンなどについてきちんと科学的なデータに基づいた態度を取るべきだというのは言うまでもなくその通りだが、僕がよく言う「素朴な環境派」に対して皮肉ばっかり吐いてそれで終わり。腐ったメディアの報道にばかりのせられてはいけないということを言う為に「メディアにのせられた市民」や「研究費のために動く研究者たち」の姿を頻繁に持ち出すが、よりメタに見れば論法が「敵側」と或る意味で同じ。貶めやすい対象を貶めて「環境危機を煽ってはいけない」と煽っている。著者自身の思想背景がすぐに相対化されてしまうという点でそういう論法はもう通用しない、あるいは通用したとしてもその知見が単なる環境派イジメのネタとして消費されるということを弁えるべきだ。市民は煽らないと動かないという戦術かもしらんが、煽られた市民がまた別の所で煽られたらそれで終わり。
だいたい環境問題がここに載ってるようなマスコミに煽られたものだけなわけがない。「地球温暖化なんてまだまだ不確実だし、環境ホルモンダイオキシンも全然たいしたことないんだよ」で終わればそんな簡単なことは無い。本当につまらない土俵でしょーもない相撲とってんじゃないよと言いたい。
言ってることは正しいんだけどなあ。。。もっとポジティブな議論をしようよ。せっかく登場人物に社会科学系の人が出てるんだから、現代思想と絡めて議論とかしたら面白かっただろうに。環境業界は構造主義時代のままという皮肉が込められてるのかもしらんが、だったらまさしくポスト構造主義へと話を移すいい伏線になったのに。