不思議な気分だ。

結局布団をかぶりながら、朝までランの顔を眺めながらその手をずっと握っていた。朝になって、ランを一階へ連れて行き、ランがいつも布団代わりにしていた座椅子の上にランを寝かせてその周りを花やランの好物で飾った。もちろん、これからランの名前を取った、蘭の花も飾った。
なんだか心にポッカリ穴が開いたような、でもそのあと心に何かとても強くて分厚いものが加わったような、そんな感じだった。きっとこの強くて分厚いものが僕のこれから人生でかけがえのないものになるのだろう。「心の中に生き続ける」とはこういうことなんだと実感した。
夕方、兄夫婦がランに会いにきた。二人ともランの遺体と会って、とても悲しかっただろうけど、やっぱり僕らと同じような気持ちだったと思う。「ありがとう」という気持ち。それが何よりも一番大きかった。
その夜は久しぶりにみんなで酒を飲みながら、ランの思い出話に花を咲かせた。やはり話が尽きることは無かった。本当に、ランが僕らにたくさんのシアワセを与えてくれたことの証だった。
あんまり悲しんでいたら、きっとランは僕らに気を使うだろう。あの、僕らの気を伺うような不安そうな顔をして。お前のそんな顔は見たくないから、なるべくお前が暖かく僕らを見守れるように明日からもまた生きていこうと思う。でも、しばらくの間はお前のその身体に直接触れ、直接その体温を感じ、直接その匂いを感じることが出来ないことが悲しくて、少し涙が出てしまうこともあるかもしれない。それくらいは許してちょーだいね。