環境税導入なるか。

先日発表された環境省による環境税の具体案[http://www.env.go.jp/policy/tax/051025/index.html]。
昨年の案と同じく税率は2,400円/炭素トンで、3,700億円の税収を見込む。平成19年1月からの実施予定だが、ガソリン、軽油、ジェット燃料に関しては原油価格高騰を受けてしばらく見送り。懸念される産業の国際競争力低下を配慮し、削減努力をした企業に対しては税率軽減措置がある。導入により温室効果ガスの二酸化炭素換算量4,300万トン(1990年比3.5%)が削減される見通し。税収は一般財源とし、全額を地球温暖化対策にあてる。
環境税というのは、「汚染者負担の原則」にのっとり、環境汚染に伴い生じる外部不経済を汚染者に負担させるもの。従って、他の税と違って「環境保護を進めるため」という、経済外のところに大目的がある。だから環境税導入を支持する立場であるほど、環境税導入により環境汚染に歯止めがかからないもしくは拍車をかけてしまうというようなことのないよう、事前に科学的知見に基づいたあらゆるシュミレーションと議論とを重ねなければならない。
環境税導入に対して一番よくある反対論は「生産拠点の海外移転による国内産業の空洞化」だ。で、自称環境派の人がこれに対して「環境よりも経済を優先するなんて、許すまじき行為だ」といって怒る。こうなると先の大目的からいささか外れたところの議論であると言わざるを得ない。
まず一般論として、自分達の行動による環境への悪影響が即座に自分達に跳ね返ってくるようなところで生活しているのでもない限り、ある程度の経済的自由が無ければ、そこで環境配慮行動をとれる人は圧倒的少数派。だから、経済無視で環境優先というの不可能だ。日本のような経済国ならなおさら。
もう一つ重要なのは、生産拠点の移転先は相対的に温暖化対策の緩い国になるであろうということ。故に生産拠点の海外移転が大規模に起これば、日本からの排出は減っても結局は地球規模での温暖化軽減に何も貢献できないか、むしろ悪化させてしまう可能性すらある。
僕が今回の案で一番気になったのは、全額を地球温暖化対策にあてる、というところ。確かに環境税を導入し、その税収を温暖化対策にあてれば、間違いなく温室効果ガス削減の効果が上がるだろう。でも、環境問題というのは何も地球温暖化だけじゃないだろうに。
例えばリサイクルなんてのは今回の環境税が導入されればむしろ後退してしまう可能性がある。リサイクルの目的は温暖化軽減というよりもむしろ資源の枯渇防止と廃棄物量軽減にある。そのために「わざわざ」エネルギーを使っているわけだ。このエネルギーが再生可能エネルギー由来ならいんだけど、現状では多分ほとんどが化石燃料由来だろう。特に紙のリサイクルに関して言えば、紙の原料である木は再生可能資源として区分されるんだから、伐採・紙製造のエネルギーよりも収集・リサイクルのエネルギーの方が明らかに大きいはず。
どうするつもりなんだろうネ?
ま、これから省庁間のやりとりが色々あって形は変わるかもしれないけど、多分導入されるんだろうな。
それにしても19年1月からってのは、仕方の無いこととはいえほとんどぶっつけ本番だな。逐一成果と影響をチェックして舵取りしていくようなシステムがちゃんと出来上がっているかどうかがカギ。