合併話の発覚からこれまでを考える。

オリックス近鉄の合併が承認されたことで、プロ野球選手会によるストライキ実施がほぼ確実となりました。一方東京高裁は選手会が団体交渉権を持つことを正式に認めました。しかしながら球団の経営者サイドの人間はこの期に及んで「ストに対しては損害賠償をする」という趣旨の発言を続け、このストがまるでいつもの労働組合対経営者という構図のストだと言わんばかりの対応を続けています。アタマが悪すぎる。
まず、前々からずっと言っている様に球団数削減そのものが全くプロ野球に利しない、正当性の全くない行動である。球団経営を目先のビジネスとしか考えない立場に敢えて立ってみたとしても最近のオーナーサイドの行動には合点がいかないところが多すぎる。合併や1リーグ制移行そのものは、超短期的に見ればおそらく運営会社には利をもたらすと推測され、仮にその目先の利益を獲得したいのであれば、それが選手やファンに納得されるような論理を組み立て世論を説得し、支持を調達した上で行動を展開しなければならない。
これは別に道義的なことを問題にしているのではなく、実際にプレーするのは選手であり、それを見て実際に球団に金を落としてくれる者のうち、最も重要なものの一つがファンなのであるのは当たり前。企業が球団を持つことで得られる、広告塔としての球団の役割、入場料、グッズ販売による収入、放映権という四つの利益は、全てファンの球団への支持により支えられていて、彼らの支持なくしては目先の利益すら得られないのは誰の目にも明白。つまり、ファンが自ら好んでプロ野球を見たりグッズを買ったりするように選手を含めた球団サイドが振舞うことが大事。政治の世界で言うところの自発的服従の動機付け、すなわち正統性の確立が、親会社の利益へと結び付く。
ここで大事なのが、ファンからの支持というのは選手という媒体の通過なくしてはあり得ないということ。「球団とは何か」という問いに対してはさまざまな答えが用意しうるだろうが、少なくとも大多数のファンにとって、彼らが愛情を注ぐ対象である球団の最重要構成要素は選手である。然るに今回の球団及びオーナー側の態度は、選手達に対しては明らかに「虐げられている」感を植え付け、ファンはその「選手が虐げられている」ことにも憤慨しつつ自分達の意見も無視されていると感じる。このような状況下でどこの誰が経営者側を支持するのか。
こんな正当性も正統性も伴わない下手糞な政策しか採り得ない人間が運営しているというプロ野球の実態が暴露された形になった。今回の騒動が仮にどこかで落ち着いたとしても、これで失った信頼を回復するにどれだけの年月を要するか。東京高裁の判決文(?)読みましたか?「プロ野球組織の代表者には『著名な法律家』が就任しており、9日からの選手会との交渉では実質的な団体交渉が行われることが期待される」という、コミッショナー根来氏へのすさまじい皮肉。法律知ってんだからもうちょっと脳みそ使えよという。
もう一つどうも納得がいかないのが、西部の「アンタ誰?」的注目を浴びていたオーナーが、まだ不確定な状況でもう一つの合併話の存在を発表したこと。あの段階で発表することに何かの意図があったのか。
一つ合併するよりも二つの方が世論に与えるインパクトが遥かに大きくなるのは誰でも容易に予想可能である。ただ単にバカ正直に発表したのか、あるいは世論の動きを様子見るためか。
敢えて先に発表することで世論の期待値を下げ(不安度を上げ)、その後「合併がまとまらなくなった」とすることでファンや選手達が「とりあえず最悪の状況は避けることが出来た」と少しプラスイメージを持ち、反対意見の強さを和らげるという狙いがあったとすればその作戦はその段階ではあり得ないものではない。しかし残念ながら今の状況は、その期待値操作によるほんの少しの押し戻しがほぼ完全にかき消されるほどに皆の怒りが渦巻いている。皮肉なことに、長らく合併をせずに来たことが合併に対する衝撃度を上げたことになる。あるいはナベツネのブチキレ発言はさすがに予想の範疇には含まれなかったのか。
いずれにせよ当分の間は予断を許さない状況が続きそうだ。


<2004.11.17 加筆修正>