HOUSE OF STRINGSアーティスト: 松本孝弘,徳永暁人,池田大介出版社/メーカー: バーミリオンレコード発売日: 2004/11/24メディア: CD クリック: 53回この商品を含むブログ (58件) を見る

評価の難しい作品だ。
松本孝弘のギタリストとしてのセンスの良さは申し分なく、このアルバムでもそれをいかんなく発揮している。一度耳に付くと次からはすぐにこれと特定できる泣きの"松本サウンド"は、彼の作り出す人間味溢れるメロディーに乗って、期待通り凄まじく強烈なパワーを纏ってリスナーの耳から脳へと突き抜けてくれる。
彼の音がオーケストラと愛称が抜群に良いことも既に過去のB'z若しくは彼のソロの作品で実証されていて、今回もその感が益々強まったと言えると思う。圧巻は3曲目の「sasanqua〜冬の陽」である。生演奏で録音されたヴァイオリン、ヴィオラ、チェロと彼のギターが創出するハーモニーは、ある時は張り裂けんばかりの悲しさを、ある時は見事に調和の取れた豊かさを表現し、その芸術性は至高のものがある。
また、ギターのみに着目すると、4曲目の「華」の終盤でオリジナルバージョンから新しく加わったギターメロディーは、この曲の壮大さを益々高めるものになっているし、13曲目の「LOVE PHANTOM」のサビの新しいメロディーは、まさしくギターの音色を生かすメロディーになっていると思う。12曲目の「Strings Of My Soul」では、最初から最後まで、時に荘厳に時に激しく、一時も注意を逸らすことの出来ない珠玉のギタープレイを聴かせてくれる。ギタープレイはこのアルバムで最高の出来と言えよう。
しかし、である。本アルバムでは、一部の曲だけが生オーケストラとのレコーディングによるもので、それらの曲は本当に素晴らしいのだが、それ故に他の曲との音のギャップが激しすぎる。実際、僕が初めてこのアルバムを聴いたとき、最初の3曲が素晴らしすぎて大興奮だったのだが、4曲目になって急に音が薄くなったことに気づかない訳にはいかず、そこから少し興奮が冷めてしまった。余りにもこれらの曲が素晴らしかったがために、どうしても「他の曲も生オーケストラだったら」との念を抱いてしまう。音がシンセっぽすぎて残念でならない。豊かな音感が全くない。「おそらく迫力ある音を演出したいんだろう」というところでも全く迫力が伝わってこない。従って、アルバム全体の作品としての評価に関しては満点とはなかなか言えないのではないだろうか。
ただし松本氏のギタープレイや曲自体が既述の通り素晴らしいことには変わりなく、このアルバムの評価は総合的には高くなると思う。
というか生楽器が入ってる4曲を聴けるだけで"買い"。なのではあるが、返す返すも残念。。。一体どんな理由で打ち込みになったのか。。。