THIS is IT!アーティスト: NANIWA EXPRESS,デニス・チャンバース出版社/メーカー: Misty Fountain発売日: 2004/10/20メディア: CD クリック: 4回この商品を含むブログ (7件) を見る

日本のフュージョン界をひっぱって来たナニワエキスプレス。今回はデニス・チェンバースが二曲で参加、パワフルで重みのあるダブルドラムを聞かせてくれる。
東原力哉氏の名前は聞き及んでいたが、実際に聴くのはこれが初めて。もちろん、ナニワエキスプレスを聴くのもこれが初めてだった。前々からナニワエキスプレスには興味があって、今回デニスが参加しているというので購入。あと、先月号のリズム&ドラムマガジンで、デニスが東原力哉とのノリの共感について尋ねられて、「俺はトニー・ウィリアムスの大ファンで、リキの演奏にもトニーを思わせるものがある。」と言っていたのも、僕に少なからず興味を抱かせた原因となった。
1曲目「DOLIO」のイントロで、いきなり独特のフィルインを聞かせてくれる。タムの音が生の温かみに溢れていて凄く良い。フィルは、不安定から解決へ向かう「安定度曲線」(僕の造語)が実に滑らかな感じ。僕もドラマーなので、単なる8ビートの中で奏でられるグルーヴを感じるだけで、この東原力哉というドラマーが好きかどうか判断される。かなり好みだ。デニスが言っているように、確かにこのフィーリングは僕がトニーやデニスを聴いたときに感じるものと似ている。
2曲目「COME DANCING」はジェフベックのカバー曲で、デニスと東原力哉が凄まじい共演を披露してくれる。まず耳に残るのは、3拍目と4拍目の裏にハイハットオープンが入っているところが多用されている点。この二つの音が微妙に音色が違っていて、凄く楽しい。ドラムマガジンの記事を読むと、やはりそれぞれの音を一人ずつが出しているようだ。こういうアプローチもあるのか、ダブルドラムをやってみたく感じる。この曲と、ツェッペリンのカバーである6曲目「WHOLE LOTTA LOVE」がダブルドラムによるもの。それぞれ似ているのだが微妙に異なる音楽性が映し出されたフィルインが堪能できる。
「WHOLE LOTTA LOVE」の間奏では、デニスが、おそらくモーラー奏法を(多分)駆使した恐ろしいまでのウルトラ驚速叩きの中にもリスナーを発狂させるかのような絶妙なタメの効いた音を奏でるドラムソロを披露し、東原力哉は意外にもいきなりシンバル系オンリーのフレーズから始まりそこからまるでエネルギーの小さな塊が四方八方に飛び去っていくようなアグレッシブさで盛り上げる。さすがにここまで特徴のあるドラミングを聴かされると、どっちがどの音を出しているのかは簡単に解る。このセッションを企画したという清水興氏に心の底から感謝した。
ナニワエキスプレスの音楽に注目すると、一番感性を刺激された曲は3曲目の「X tribe」である。「河原で妙に思い浮かんだベースラインが基」という清水興の地面が踊るようなベースと東原力哉のタイトなドラミングの組み合わせだけでもアタマがおかしくなりそうなご馳走。決して速くないのに感じられるスピード感、その上をゆったりと自由に流れるサックス、ラップとスクラッチの絶妙な掛け合い。なんだこのカッコ良さは。東原力哉のドラムが僕にとっては新鮮であることの興奮もあるかもしれない。3分30秒を越えた辺りからの彼のドラミングは、それまでずっと繰り返されていたパターンの影を感じさせながらも徐々に刺激的なものに変わってゆく。シンコペーションの効いたシンバルに心からシビれる。その創造力・構成力とこれを実践するテクニックにただただ敬服するばかりである。
他に、10曲目「Urban barbarian」や9曲目「Mandrill」などが特に楽しめる曲になっているが、はっきり言ってどれも素晴らしい。今までに聴いた日本のフュージョンで、文句なしで一番気に入った。
これまでナニワエキスプレスを聴かなかったことを心の底から後悔した。こういう後悔を感じるのは実に久しぶり。